吸引困難

「吸引はしなくて大丈夫」と言われてしまう!


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●攻略ポイント1

 

その吸引が「本当に必要」なのか?吸引実施の基準に照らし合わせてみよう。

 

【看護師の知識】吸引困難な場合の対処法について

 

○「困難」のワケ 本来なら、一巡するごとに評価し、吸引が必要かどうかつかめない。

 

看護師さんから見て苦しそうでも、患者さん自身は「大丈夫、平気です」というケースは時々あります。特に高齢患者の場合は、本人は自覚せず、実際は飲み込んでいながら「大丈夫」と言う人も多い。そもそも吸引は、外部から強い刺激を与える処置ですし、患者さんが自分で痰を排出できるのなら、吸引は不要です。
そうだとすれば、その吸引は、疑問です。その都度、看護計画を省みるべきです。 「2時間ごとの吸引」という型どおりの業務は、一般論や原則論であり、教科書的知識にすぎず根拠はありません。吸引は前述のとおり、外部から強い刺激を与える処置ですから、低酸素血症、気管支損傷や無気肺などの合併症を起こす可能性があります。

 

患者さんに大きな苦痛を与えるので、不必要な吸引は避けるべきです。ただし、長時間吸引しないことにより、分泌物がたまり、気道が詰まったり、低酸素状態、換気量の低下、呼吸苦などを生じないようにしましょう。型どおりの業務として行うのではなく、適切に判断評価し、必要と判断した場合に、吸引を実施しましょう。
本来ならば、一巡するごとに痰のたまっている量を確認し、吸引すべきかどうかを判断するべきです。その点が不行き届きのために、看護師の側に「吸引は不要」という先入観・疑問が出てはいけません。

 

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○実践しよう1、吸引が必要かどうか判断する。 

 

吸引が必要となる条件は、以下のものです。

 

  1. 気道が痰によって狭まり、閉鎖している。
  2. 患者さん自身が咳によって痰を外に出せない
  3. 痰のたまっている場所が吸引できる範囲にある

 

そこで、患者さんの呼吸回数の増加、努力性呼吸、胸郭運動の低下、酸素飽和度の低下、気道が狭まった異常音などから、吸引の必要性を評価します。さらに、痰が吸引できるものかどうかを確認します。

 

 

○実践しよう2、吸引のタイミングを見極める。

 

判断した結果、吸引が必要であっても、それによって循環動態が不安定になることがあります。タイミングとしては、血圧などが安定しているときに行います。また、体位変換後は痰が移動していることがあるので、聴診など痰のたまっている位置を確認後、実施すべきです。

 

ただし、誤って飲んだ場合には、気道が詰まったり、肺炎などの可能性があるので、自力で咳ができない患者さんは早急に吸引する必要があります。

 

 

○「吸引の適応条件」として参考になるガイドラインを知っておきましょう。

 

吸引の適応となるのは、以下のような人です。

 

  1. 気管切開などで人口気道を用いている患者さん
  2. 自分で気道内分泌物の痰を出せない人

 

さらに、外部からの刺激の低い方法で痰を排出しようとしても、排出不能の場合、次のような状態で気管内に分泌物が残っていた場合に適応となります。

 

  1. 努力性呼吸が強くなっている
  2. 視覚的に確認できる(気管切開などの場合で明らかに痰が出ているのが見えるなど)
  3. 胸部聴診で複雑な音が聴取できる。あるいは呼吸音の低下が認められる
  4. 胸部触診でガスの移動に伴った振動が感じられる
  5. 誤って飲み込んだ場合
  6. ガス交換障害がある(血液ガス値等の低下)

 

 

 

●攻略ポイント2

 

吸引処置の内容を理解していない患者さんもいる。痰を排出するメリットと処置の様子についてわかりやすく説明をしよう。

 

 

○「困難」のワケ 「吸引しなくて大丈夫」という言葉の背景をつかめていないから

 

吸引を断る患者さんは少なくないでしょう。一つには、見たことがなく実際の場面をイメージできないからです。もう一つは、過去の吸入処置の苦しい体験から拒否するケースです。いずれにしろ、拒否の理由を把握し、理由を確かめることです。

 

 

○実践しよう1、説明はイメージしやすい言葉でしましょう。

 

患者さんが吸引処置の意味がわからないようであれば、吸引の必要性と内容を、患者さんがイメージしやすい言葉で分かりやすく説明します。同時に、患者さんの身体の状況が吸引によってどのように改善されるかも説明します。

 

 

○実践しよう2、苦痛が少ない方法を提案しましょう。

 

吸引したほうがよいか、吸入しないほうがよいか等を説明し、できるだけ患者さんに苦痛を与えない工夫を試みる。最初の説明で拒否されても、患者さんの性格によっては、何日か後には、了解してくれることもあります。患者さんとのコミュニケーションが大事です。

 

 

○スキルアップしましょう。

 

呼吸のパニックコントロールが安全で楽な痰の口外への排出に役立ちます。処置の苦しさから吸引を拒否している患者さんは、呼吸困難になりパニック症状を呈することがあります。その場合、患者さんが安全で楽な体位をとらせて落ち着かせます(背中をさする、体を屈曲させるなど)。

 

そうすることにより呼吸のタイミングを整えます。どの体位が一番楽になるかは、事前の相談です。呼吸の安定により、吸引を行わなくても自力で痰が出せるようになる患者さんもいます。

 

 

○ご存知ですか。吸引チューブは使い捨てが基本です

 

再利用する場合は、消毒後、新鮮な水道水ですすぎを完全にしましょう。CDC(アメリカ保健社会福祉省所管の感染症対策の研究所)のガイドラインの勧告にあるように、吸引チューブは感染リスクの面から「危険度が中程度の医療器材」に分類されています。基本的には、殺菌したものを一回使用です。下気道に直接微生物を押し込むことになります。再利用すると、このような感染リスクがあります。

 

また再使用のために使う消毒薬による粘膜刺激なども考慮しなければなりません。再使用はすべきではありません。吸引チューブを再利用する場合には、適切な方法で保管します。

 

 

まず、吸引チューブを使用した後は、直ちにアルコール綿で拭き取り、新鮮な水道水でよくすすぎます。そして、殺菌した容器に入れて、8時間ごとに交換します。消毒薬の中に吸引チューブを浸しておくのは、菌の繁殖を考えると好ましくありません。

 

消毒済みの吸引チューブを患者さんに使用する前には、チューブに消毒液が残留しないように新鮮な水道水でチューブ内外の消毒液を十分に洗浄します。このときは必ず新鮮な水道水を使用してください(溜めておいた水道水にはレジオネラ菌が存在している可能性がある)。

 

 

○医療機器の分類

清潔度 器材の分類 Spauldingの処理分類(*)
クリティカル器材(*) 無菌の組織または血管内に使用するもの 減菌
セミクリティカル器材 正常粘膜に接触するもの 高水準消毒
ノンクリティカル器材 創(きず)のない皮膚に接触するもの 低水準消毒、場合により洗浄のみ

 

○日常的に使用される器材の取り扱い例

吸引チューブ セミクリティカル器材 単回使用器材。再使用する際は、処理の簡便さを考慮し、減菌する
咽頭鏡 セミクリティカル器材 高水準消毒でよいが簡便性を考慮し、減菌する
聴診器 ノンクリティカル器材 使用頻度が高いため、簡便さを考慮し、アルコール綿で消毒する

 

*クリティカル器材……危険度が最も高い 
*Spaulding(スポルディング)……スポルディング(DrE.H.Spaulding)は、使用目的と使用部位に対する感染の危険度に応じて医療器材を3つのカテゴリー(クリティカル器材、セミクリティカル器材、ノンクリティカル器材)に分類し、適切な消毒・減菌方法を示した。同氏のこの考え方に基づき、適切な処理を実施しましょう。



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