医師確保に不可欠な高額報酬

医師確保に不可欠な高額報酬


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国立がん研究センター中央病院(東京)という我が国のがん治療の要となっている施設では、2007年末から2008年の3月にかけて10人の常勤の麻酔科医の内、5人が退職した。麻酔科医という手術の安全管理を支える医師が一挙に半減したことによって、以前までは約20件行っていた1日の手術数が15件にまで減少したという。

 

過重な労働に嫌気がさしたということばかりが理由ではないだろうが、我が国のがん治療の中枢となっている病院ですらこうしたことが起こっているのである。皆さんは、以下の新聞報道が2008年の2月20日になされたことを覚えているだろうか。「大阪・泉佐野の私立病院で麻酔科医を3500万円で募集」これが見出しである。

 

医師確保に不可欠な高額報酬

 

さらに、記事には次のような内容が書かれてあった。『公立の病院では異例の高額となる最高で3500万円の年間報酬を条件に大阪府泉佐野市立泉佐野病院が麻酔科医3人を募集していることが分かった。

 

現在の常勤麻酔科医4人が3月末で辞職することに加え、昨今の医師不足もあってこうした対応に出た。病院は「麻酔科医は救急対応を含んだ手術には必要不可欠で、拠点病院としての機能を維持するための対策として考えた」と説明した。

 

年間の報酬は病院によると勤務の日数に応じて2500万〜3500万円の間に収まる。病院事業管理者という経営のトップと比べて2倍の数字だ。常勤で病院で働く医師の平均年収は1350万円程度だという。大学病院の医局の人事によって公認の確保が行えていたのが従来であったが、麻酔科医を中心に、最近では所属先のないフリーと称される医師が急速に増えている。

 

1日約12万円で雇っているのが泉佐野病院であり、この基準に照らし合わせて報酬が算定されたという』以上か報道の内容である。実はこの報道には後日談があり、2人の常勤医が泉佐野病院に1年契約で雇われたという。

 

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しかし、ある医療ジャーナリストによると、看護師や外科医ら複数のスタッフが協力して手術に当たるチーム医療の一員として動くケースが多いのが麻酔医なのである。麻酔医だけが高額の報酬を受け取っている状況でうまく機能するのかは疑問だ。採用された側も苦しむのではないだろうか。

 

仕事の価値を決めるものとして、報酬が重要であることに変わりはないが、すべてがそれによって解決されるわけではない。労働対価だけを求めているのが勤務医ではないからだ。2008年には北見赤十字病院で、6人いた内科の医師の内5人が過重労働などを理由として一挙に退職するということが起こった。

 

内科はこの影響で全面閉鎖、通院あるいは入院中であった患者の約500人は転院の必要に迫られた。
北海道オホーツク管内で唯一高度医療に対応することのできる第3次救急医療機関だったのが北見赤十字病院で、同じ水準の病院を住民が探すことになれば、160キロも離れた旭川にまで向かうことになる。こうした事例は地方において起こった(そして今後も起こるであろう)医療崩壊の象徴ともなっている。

 

 

上記の病院のようなことが起こらないように、東北や北海道では金銭によって医師をつなぎとめるという方法がとられている医師の平均年収がトップなのは青森県だが、同県は医師数の不足に悩まされている。ここで一つの疑問が浮かんでくる。資金の面で余裕のない病院はどのようにして医師を確保しているのだろうか。

 

医療系の人材紹介会社を利用した転職を行う医師が、大学医局の人事権の弱小化以降増えている。第一に求職医師が確認する点が給与である。医師に限らず、転職するのであれば誰もが現時点よりも給料を上げたいと考える。

 

そう考えた際に、地理的な問題や民間病院における低ステータスという問題が地方の病院には付いて回る。同じ区域にあっても、自治体病院には繰入金があるため、最新の設備がそろっている。こうした状況の中で地方の民間病院が同じ条件で競争をすれば医師不足の問題が置き去りにされてしまう。結局は給与がものをいうため、多少の無理はやむを得ない。



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