病院の「たらい回し」が起こる本当の理由

病院の「たらい回し」が起こる本当の理由


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受け入れ先の病院が決まらず、救急患者を乗せた救急車が次から次に病院を探すことをたらい回しという。消防庁の実施した統計によると、実に2452件にも上るたらい回しが04年から05年の2年間に起きていた。7,8か所の病院から断られるというのはザラである。

 

たらい回しの背景にあるのは医師数の不足や病院の多忙である。東京消防庁に属している救命士は匿名を条件に次のように語った。「医師不足、とりわけ産婦人科医の不足を実感する」同じ救命士は、治療の差別を応急患者にもたらしてはならないが…とことわったうえで、救急患者の間で起きているモラル・ハザードについて次のように述べる。

 

病院の「たらい回し」が起こる本当の理由

 

「妊婦には通常の場合、妊娠3か月のころから掛かり付けの病院ができるはずです。しかし、明らかにお腹が大きくなっても病院に向かわない女性も存在しています。様々な事情があるのでしょうが、経過を承知していない産科病院が治療を嫌がるのは当然です」

 

なぜなら、途中から容態を診はじめるとデータが不足しているため、治療にミスが生じやすくなるからだ。仮に治療に失敗すれば裁判を起こされて訴えられる可能性も高いために及び腰になるというのが医師側の主張である。

 

救急病院が患者を拒む理由として多く見られるのが、「他の患者の治療で手いっぱいである」「治療に適任の医師がいない」という理由だ。また、住所の不定な患者や健康保険証を持っていない患者については、当然ながら病院側に敬遠される。かなり高い確率で治療費を踏み倒すからだ。

 

1ヶ月に同一人物が何度も119番を通報するケースも決して少なくない。1日3交代の勤務体制で働いているのが救急隊員で、週に1回以上は深夜の勤務をこなし、正月休みをとることもできない。

 

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養成を受けて救急車で現場に向かうと公園のベンチだったということも頻繁にある。念のために理由を聞いてみると「腹が痛い」と酒臭い声で言われるそうだ。前出の救命士は次のように言う。「救急車をタクシーのように使用する人がいます。救急車に乗せて理由を尋ねてみると、通院しているから…と答えることもあります。

 

他所に本当の救急患者がいるかもしれないのに、殴ってやろうかと正直思いますよ」一方で、医師の側も救急医療に大きな危機感を募らせています。現場で活躍している多くの臨床医が、構造的に良質な医療を提供することが難しくなっていると漏らしているのです。

 

 

医師の中には、我が国の医療が完全に崩壊するまでにそれほだな額はかからないだろうという者までいます。軽傷の患者が救急病院に安易に駆け込むこと(コンビニ受診)が救急医療崩壊の一因となっていますが、物理的に救急患者を受け入れることができない「受診不能」も一面の事実としてある。

 

こうした状況に対応するために、軽度の時間外診療患者に関しては時間外の加算を設ける病院も出てきている。深夜加算を22時から午前6時までとし、初診を4800円にしたところ、患者の数の1か月当りの数字が100人程度減少したという事例もあります。こうしたことがある一方で現場からは、「このような取り組みは言わば泥縄であり、根本的な解決がなされたわけではない」という指摘が出ています。



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