急速な高齢化と対応の立ち遅れ

急速な高齢化と対応の立ち遅れ


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医師数の不足を解消するための、現実的な方法とは何だろうか。昨今では、「勤務医から開業医へ」という流れに、規制を設ければよいのではないかという議論が持ち上がっている。医師が病院から逃げ出して開業するから、勤務医不足に陥ったのだという分析であるが、こうした論調はあまりに乱暴である。

 

ある医療ジャーナリストによると、勤務医の不足状態は開業規制によっては改善されないという。なぜならば、開業を現在行っている医師の多くは壮年期の医師であり、管理職や開業医をこうした世代の医師が務めるというのは、医師のキャリアパスに則ったことだからである。

 

急速な高齢化と医療の対応の立ち遅れ

 

現在、開業適齢期を迎えている医師は、昭和50年ごろに新しく設立された医大の卒業生で、開業医の数が増加するのは当然のことである。残業や当直などの肉体的な負担の大きな病院勤務医を、この世代の医師に無理やり続けさせることは現実的には不可能と言えます。

 

若手の医師に勤務医をできるものが不足しているのが現状で、若い年齢層の医師を増やす他はない。我が国では1975年以降、急速に高齢化が進んできた。合計特殊出生率が1.5を切った1995年からは特に顕著で、人類史上例を見ないほどの速さで高齢化が進んでいった。

 

総人口も2005年を境に減少へと転じ、先進各国の中で中盤に位置していた高齢化率は2006年に20%を超え、世界的に見ても、稀に見る超高齢化社会が訪れている。こうしたデータがある一方で、患者の発症年齢というのはそれぞれに特有のもので、高齢者が罹り易い病気と若者が罹りやすい病気とはそもそも異なっている。

 

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男性で58歳、女性で61.5歳だったのが1950年時点での日本人の平均寿命だが、当時最も多かった死因は結核であった。2005年の時点では、死因の第一位がガンなどの悪性腫瘍となり、平均寿命も男性で78.5歳、女性で85.5歳となりました。

 

死亡総数に占める悪性腫瘍の割合は、50年時点では7.1%に過ぎませんでしたが、2005年にはこれが30.1%にまで増えています。また、3大疾患(心疾患、悪性腫瘍、脳血管疾患)の占める割合は、24.7%(50年時点)から58.3%(05年時点)にまで上昇している。

 

医療水準の向上と衛生状態の改善が、経済成長によってもたらされ、大幅に減少したのが乳幼児の死亡率でした。これが平均寿命を延ばした原因の一つです。結果的には、集団の平均年齢が上昇したことで死亡総数に占める各疾病の構成も大きく変わってきた。

 

 

尚、結核をはじめとする感染症は、科学・医学・化学の進歩によって安価に早く、後遺症を残すことなく治療できるようになったわけだが、もう一方では、加齢現象に対する本質的な成果を医学の分野が上げられていないのも事実である。

 

高齢者が罹り易いのが3大疾患であり、医療費の増大や治療の長期化、完治の可能性や後遺症の有無といった問題は、いまだに解決することができていないというのが実情である。医療に対する国民の期待度を上げ、結果的に医療への満足度を下げたのも経済成長である。

 

子供や親が出産で死亡するというのは今日では考えにくいが、一昔前までは仕方のないこととしてあきらめることも多かった。また、感染症治療のこれまでのモデルでは、治療を早期に行い、入院をしてもらうのが職場復帰させるための最も効率的な方法であった。

 

 

早期の職場復帰という点も重要だが、感染症の蔓延を防ぐための入院というのは社会にとっても重要だった。以上のような点から、社会的かつ経済的に最も適切な手段とされてきたのが入院なのだ。

 

だが、最終的な治療の目標が各人によって異なるため、医療が現在直面している加齢性の疾患について入院が適しているとは必ずしも言えない状況がある。従って、高齢化社会における3大疾病に対する医療と、従来の疾病構造に対する医療とでは、供給される医療サービスの体制が大きく(あるいは全く)異なったものになってしかるべきであるが、医師自身の意識も、あるいは医療のシステムもこうした事態に十分対応しているとは言い難い。



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