医師の名義貸しが果たす意味とは?

医師の名義貸しが果たす意味とは?


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実際のところ、医師の名義貸しは僻地の病院にとっては必要不可欠なのです。様々な職業に同様のことが言えますが、僻地への勤務を希望する若者は殆どいないのが現状で、恒常的な医師不足を抱えているのが地方の病院なのです。

 

その反面、県庁所在地をはじめとした都市部に位置する大病院には、若い医師が腕を磨くために集まってきます。数年前までは医局制度が健在だったため、身分保証なしの無給で働く若手医師が大学病院に多く、生活苦が懸念されていました。

 

医師の名義貸しが果たす意味とは?

 

こうした現場の問題を調整できていたのは、医師のアルバイトがいたためです。この医師アルバイトは唯一の収入源として若手の医師に重宝されていました。また、大学や大学院に所属する医師を地方の病院では非常勤(アルバイト)として採用し、医師数の不足を解消してきました。

 

我が国においては、全国で一律の医療の金額や医師の定数を厚労省が定めており、病院の唯一の収入源となる診療報酬はこの定数を満たさなければ経営は成り立ちません。このような決まりがあったため、存続のために必要であった常勤の医師数を確保するために地方の病院はアルバイトの医師を常勤として届け出ていました。

 

こうしたことがなされたため、病院に実際に勤務している医師の数は約16.6万人であるが、病院の報告した常勤として換算する医師の数は18万人になるという実に奇妙な現象が起こったわけである。上記の数値は病院報告、医師・歯科医師・薬剤師調査によるものである。

 

実人数と常勤換算数の逆転現象は病院看護師の場合にも同様で、60万人:56.8万人と3.2万人の開きが生まれている。看護師資格の名義貸しが診療報酬を得るために行われているのである。僻地における医師不足への対応という側面が医師の名義貸しにあるということがお分かりいただけたと思うが、厚生労働省がこの問題について熟議を重ねて根本的な対処を行うことはなく、規制及び処分の強化が実行された。

 

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研修医のアルバイトが禁止され、その結果として約1万4500人、2学年分の労働力が突如として地域病院等から消え去った。研修医の技量向上のために導入されたはずのスーパーローテート方式が、結果的に加速的な医療崩壊を招いたとは何とも皮肉な話である。

 

2003年度の厚生労働省による病院を対象として立ち入り検査の数は、名義貸しの問題が明るみに出たことで前年度に比べて倍増した。診療報酬の価格は2002年に1.3%引き下げられ、この結果2002年以降は病院数が0.3%、病床数が0.5%程度毎年減少している(医師施設調査及び病院報告による)。

 

簡単にいうと、アルバイトの看護した医師に頼っていた病院が潰れたということになる。これに端を発して地域医療が崩壊していったのである。それなりの合理的な理由に基づいて医療現場で非常勤の医師が重宝されたはずで、それを拙速に禁止するよりも、非常勤医師の積極活用や地方病院の設置条件の緩和などを考慮すべきではなかったか。

 

 

病院勤務医は地方の場合には多くが公務員であるが、現行の法制下では志を持った公務員医師が休日や夕方以降に僻地での診察を行おうとしても、地方公務員法や国家公務員法の専業規定に抵触する恐れがある。

 

公立病院や国立病院に勤務している公務員医師たちは、隣接する病院の手術を助けに行けないのが現状である。こうした制度は決して患者の視点に立ったものとは言えないであろう。加えて自治体病院の問題点にも触れておこう。

 

財政難にある自治体がほとんどであるにもかかわらず、多額の建築費や人件費を投入している。県立病院と市立病院の建て替えが同じ市内で同時に行われることも珍しくなく、近隣の自治体に救急医療病院があって通院が可能であるにも関わらず、地元の選挙区である自治体に地方議員が病院を建設したという事例もある。

 

 

なぜこのような過剰な競争状況を生み出す必要があるのか。公共サービスを減らすと住民の税負担が軽くなるわけでも、税負担が重くなれば公共サービスも増えるというわけでもないのが我が国の地方財政制度である。我が国では地方債の発行は減税をした際には行えないという仕組みになっており、前者のようなことは起こり得ない。

 

また、地方財政を自治体が自らの努力によって好転させてもその75%が交付税の減少によって相殺される仕組みとなっているため、増税を自主的に行うインセンティブが見当たらない。従って後者のようなことも起こらない。

 

こうした背景があるために、大きな病院が建てられても看護師や医師が集まらないという状況が生まれる。なぜなら、限られたパイ(有資格者)の取り合いをしているだけだからだ。



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